14.自由行動

トキオはミカヅキとも一緒に昼食を、と思ったのだが、彼はもう食事を済ませていたらしく、その上クロックハンドが「はよ部屋戻ってまえ」と追い立てたので、すごすごとギルガメッシュを出ていってしまった。

「すっげーキツイなぁ、いっつもあんな調子なのか?」
トキオが苦笑しながら言う。
「同郷やて言うたやろ。すぐ追っかけてきて忍者になるて言うたくせに、俺がここに着いてからもう三ヶ月やで。あいつが悪い」
「やっぱカレシなの?」
ヒメマルが浮き立つ声で訊く。
「三ヶ月前までは一応な。これからはどうするか考えてるとこ」
「勿体ないじゃん、いい男なのにさぁ」
「まぁ顔はそうやけどさ。…あれ、イチジョウは?」
「男前のサムライにナンパされてどっか行っちゃったよ」
「へえ!?帰ってきたら話聞かなあかんな!」
「でも、いつ戻るかわかんないんだよな。話長引いてんのかな」
トキオが言う。もう食事は終わってしまった。
「しばらく自由行動にする?」
クロックが提案すると、ヒメマルが頷いた。
「伝言板に書いておけばいいんじゃないの?
「そんじゃ、とりあえず3時まで自由行動にするか」
トキオは立ち上がって、伝言板へ向かった。

パーティの名前をどう書くか少しだけ悩んでから、結局、
<トキオのパーティは、3時にギルガメ前集合>
というメモをトキオが張り終えると、メンバーは全員自由行動に移った。

ヒメマルとブルーベルは、魔術師ギルドに出かけていった。
クロックハンドはミカヅキの部屋へ行くらしい。
トキオは特にやりたいこともないので、馬小屋で昼寝でもしようと宿屋へ向かうことにした。
…ら、ティーカップもついてきた。

ほぼ定位置になっている場所で横になると、トキオは隣のティーカップに聞いた。
「お前、ほんとに他人に対する恋愛感情とかないわけ?」
「ないなんて言ってないぞ」
「でも自分が好きだって言ってたじゃねえか」
「好みのタイプを聞かれたからそう答えたんだ」
「お前みたいなタイプ、そうそういねえだろ」
「トキオ君」
ティーカップは半身を起こした。

「君は好みのタイプしか好きにならないのか?具体的な理想のタイプというものがあっても、好きになってみたら全然違うタイプだったという経験はないのか?」
「そりゃあ、結構あるけど」
「僕だってそうだ。僕みたいなタイプが見つからないからといって、恋をしないというわけじゃないのだよ。大体、僕が僕に出会ったとしてみろ」
そこまで言うと、ティーカップは、もったいぶるような間をおいて、
「愛しすぎて死んでしまう」
と続けた。
「あぁ、そりゃあ気の毒だなあ」
「だから僕は自分を守る為、自然と別のタイプを好きになってしまう。不本意だが仕方のないことだ」
「へぇ、ふーん」
恐らく芝居がかった動きをとっているであろうティーカップに背を向けて、トキオは既に半分眠っている。

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