13.5.叢

「ササハラと申します。二十五になります」
イチジョウと同じぐらいの背格好で少し細身のサムライは、ゆっくりと歩きながらそう自己紹介した。

「訓練場でお見掛けしてから貴方のことが気になっていました。…イチジョウ殿は、侍にはならないのですか」
「僧侶呪文を覚えきってからにしようかと思っています」
イチジョウの答えを聞いて、ササハラは笑った。
「私も同じ状況だったのですが、なれるとわかると我慢がきかず転職してしまいました。どうにもせっかちで」
「いや、わかります。私も少し迷っているんですよ」
イチジョウも笑って応える。

「早く見たい」
「…は」
「イチジョウ殿にはきっと、侍の装束や刀がよく似合う。見蕩れる己が容易に想像出来ます」
率直な物言いに、イチジョウは思わず立ち止まった。

ササハラも歩みを止めて、真っ直ぐイチジョウを見つめる。

数秒の間があった。

「…あ、その…、なんというか。光栄です…というのも妙ですか」
イチジョウは頭を掻いて照れ笑いした。

ササハラは目を細めると、
「思った通りの人だ」
と呟いた。

視線を上げようとした瞬間、猛烈な眠気がイチジョウを襲った。
*
意識が…夢と現実の境を漂っているようだ。

眠りに落ちかけている時のような曖昧な認識の中で、わかるのは-

ここがさっきまで話をしていた道の脇の雑木林らしいこと、

周囲は背の高い草と木々に囲まれていること、

自分は寝かされ、服はほとんど脱がされて背中に敷かれているらしいこと、

ササハラ…が、同じように服をはだけた状態で、自分の躯に触れていること、

そして、どうやら自分はこの男にカティノをかけられたらしいということ…だ。

意識が少し現実に近づいた時、
「っ!」
乳首に触れられて、イチジョウの躯はビクンと反応した。

それに気付いたササハラの手が、イチジョウの頬にかかる。
「声は出さないでください」
囁くようにそう言うと、唇を重ねてきた。

舌の感触に、また、半分眠っているような心地になる。
くちづけしたままでササハラの右手は下肢へ伸び、イチジョウの固くなりはじめているものに触れた。
イチジョウは微かに眉を寄せる。

自分は流される方ではないと思っていたが、この無茶なシチュエーションに、間違いなく興奮してしまっている。
相手が好みだから、というのもあるのかも知れないが、抵抗する気が起きない。

ササハラの指はイチジョウが硬さを増したことに満足すると、撫でるような動きで、もっと下へと動いた。
「!」
指にローションが塗ってあるのか、-躯が弛緩してしまっているのも合わせて、イチジョウの秘孔は、中指の侵入をあっさりと許してしまった。

長い指をゆっくりと根元まで突っ込み、出し入れする。
イチジョウの脚は、抗うように草を掴んだ。
普段はほとんど抱く側で、そこを攻められるのは慣れていない。

ササハラは唇を離し、余った左手と唇で躯を愛撫しはじめた。
柔らかいその動作と、まだ残っているカティノの効果が、緩慢な快感を誘う。
「うッ!?」
不意に押し入られて、声が漏れた。
そっと、口元に掌があてられる。
イチジョウが薄目を開けて見ると、ササハラは目だけで笑って、イチジョウの肩を掴んだ。
ゆっくりと、奥まで入ってくる。
躯にほとんど力が入らない為か、何年も使っていないのにも関わらず、痛みはほとんど無い。

根元まで埋めた所で、ササハラは息を吐いた。
イチジョウの髪に両手の指を差し入れ、軽くくちづけると、腰を使い始める。
「…は、…っ、、、」
道からはずれた場所とはいえ、白昼の野外でここまでするのか-と思ったが、この強引なやり方は嫌いではない。
イチジョウの腕は、無意識にササハラの背に回る。

荒くなっていく息遣いの中、イチジョウは初めて、挿れられることで射精した。

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