15.ギルドにて

「ベルはティーのこと好きなの?」
魔術師ギルドへ向かう途中、ヒメマルは気になっていたことをハッキリ聞いてみた。
「好きだね」
ブルーベルは、あっさりと答える。
「それは、恋愛感情?」
続けて訊くとブルーベルは少し笑って、
「最高のEだと思う。でも恋じゃないな」
と言い切った。

「なんだ、面白くなるかと思ったのに。つまんないなぁ~」
ヒメマルは頭の後ろで腕を組んだ。
「俺にそういう期待はしない方がいいよ」
「なんで?」
「ヒトに興味ないんだ」
「ヒトって、ヒューマンのこと?」
「ヒューマンもエルフもドワーフもノームもホビットも全部」
「…ていうと…?」
ヒメマルの頭に、犬やら猫やら馬やらが浮かぶ。
-まさかね~。
とヒメマルが想像を打ち消していると、
「ギルドで話すよ」
ブルーベルはそう言った。

ギルドに来た目的は、ブルーベルは書庫で本を借りる為。ヒメマルは新しいデザインのローブを物色するためだ。

「新しいもの着るとなると、髪もいじりたくなるよね~♪」
さっさと"新作"ローブを買って、ヒメマルはご機嫌だ。
「ベルは買わないの?」
「いいよ」
「ふーん、色々着てみたらいいのに。勿体ないなぁ」
ブルーベルは笑った。
何度も話をしてみるとブルーベルが笑う機会は意外に多く、無愛想なわけではないことがわかってきた。
-人見知りしてたのかな~。
とヒメマルは思う。

「さっきの話の続きは書庫で?」
「うん」
「書庫なんて、魔術師の称号もらってからは入る気にもならないけどなあ」
人のまばらな書庫の中、ヒメマルは入り口に近いテーブルについた。
ブルーベルは、<研究中の魔術>の棚から、数冊の本を持ってきて、テーブルに積み重ねる。
「まだ確立されてないやつ?」
「そう」
題名から察するに、全て召喚魔法に関わるものらしい。
「この項目の、これ」
ブルーベルは本を開き、召喚で呼び出せるという魔物の描写と、図解のひとつを差した。
「スマートな魔物だなぁ」
描かれているのは、白い騎士のようなフォルムの魔物である。
「素敵だろう」
上気したようなベルの声に、ヒメマルは思わず顔をあげた。

「もしかして、…こういうのがお好み?」
「うん」
ブルーベルは少し照れているようだった。
「魔物かぁ…」
「この文献がどこまで信用出来るかわからないから、こいつが実際にいるかどうかもわからないし、会えたからってどうなるものでもないと思うんだけどさ」
ブルーベルの言葉を聞きながら、ヒメマルは改めてその魔物を眺めた。
「おかしいかな、やっぱり」
「ううん」
ヒメマルは満面の笑みを浮かべた。

「ロマンチックだ」

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