16.時間つぶし

なんとなく寝付けなかったティーカップは、街中に出て新しいマントを買った後、ギルガメッシュへ向かった。

壁際のパーティメンバー募集用の伝言板を、ミカヅキがじっと見つめている。
「やあ、カッパ君の彼氏じゃないか」
「、カッパ、?」
ミカヅキは、低い声で小さくそう言って振り向いた。
「そうなんだろう?」
「あ、フィリップのパーティの」
「その名前を使うとまた彼の機嫌を損ねてしまうんじゃないか?」
「!」
ミカヅキは慌てて覆面の上から口元を抑えた。
「少しつきあいたまえ、1人で飲むのはつまらないんだ」
ミカヅキはこくりと頷いた。
*
トキオが目を覚ますと、ティーカップはいなかった。
-え?なんだこりゃ?
妙に寝心地がいいと思ったら、体にマントがかけられていた。
真っ赤な…ティーカップのものだ。
-…?
寝起きの少しぼんやりとした頭で、マントを眺める。
ふと、今何時なのかが気になった。時間を過ぎてたら誰か来ているだろうから、まだ三時にはなってないだろう。
そう思って立ち上がろうとした時、手がマントに触れた。
-…あいつ、俺に気があんじゃないだろうな。
自分で考えておいて、目眩がした。
-ないない。
すっかり目も覚めたし、時間までブラブラするかと大きく伸びをしていると、クロックハンドが入ってきた。
*
向き合って座ると、ティーカップはワインを、ミカヅキはジンジャーのジュースを頼んだ。
「そういうのを飲むとは言わないぞ」
「あまり、強くなくて」
「君は見た感じと中身が何か違うな。カッパ君と性格を入れ替えた方がいいんじゃないか」
「フ…クロックは、あの性格が」
ミカヅキは何かモジモジしている。
「あの性格がよくて、それが好きだっていうのか?」
こくりと頷く。

「君はマゾヒストか?」
「…」
あまりに直接的な質問に、ミカヅキは赤面した。
「ふうん」
ティーカップは、届いた飲み物に手を伸ばした。
「やっぱり、色々ときつい言葉で言われると嬉しいのか?殴ったり蹴ったりぶったりとか、そういうことも気持ちがいいのか?」
遠慮なく質問を浴びせられたミカヅキは、口篭もっている。
答えがないとみて、ティーカップは話題を変えた。
「結局、カッパ君には振られずに済んだのか?」
ミカヅキは、うん、うんと首を振った。
「事情は軽く聞いたが、どうして三ヶ月も遅れたりしたんだ」
「初心者の忍者は、役に立たないので…」
「会いに来る前にわざわざ経験を積んだのか」
ミカヅキはまた頷いて、
「もう少し強く、もう少し…と、なかなか区切りがつけられなくて」
「気持ちはわかるが、君も不器用な男だな」
ティーカップの言葉に、ミカヅキは俯いた。

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