131.再編成

「君がなんと言おうと、僕はヒメマルと交代する」
ギルガメッシュのテーブルで、ティーカップはそう言い放った。

返す言葉を探している間に、
「魔術師呪文が使える人間が、前衛にいて剣を振るのは非効率的だ。他に剣を使える者がいるんだぞ」
険しい表情でまくしたてられて、トキオはひるんだ。
「けど、本調子じゃねえと、逆に…」
「本調子じゃなくたって俺よりずっと上だよ、ティーの剣は」
ヒメマルが真顔で言った。
「ヒメ、当てるの下手だからな」
今回の戦利品を鑑定しながら、ブルーベルが言う。
「私も、ティーに前に出て欲しいです」
「俺もや、攻撃魔法の援護は多い方がええ」
前衛2人も、口を揃えた。

本当に危険な相手に遭遇したことで、全員が、探索が常に死と隣合わせであることを再認識したのだ。最も無駄のない布陣を望むのは当然で、反論の余地は全くない。
「…じゃ…、次から、ヒメマルとティーカップ入れ替えに、する…か」
トキオは、力なく頷いた。

「おう、変な時間にいるじゃねえか、今日はもう上がりか?」
見上げると、ダブルが立っていた。
「ああ、まあな」
フラックとの戦闘で動揺したパーティは、余力を残したまま探索を切り上げたので、まだ昼を少し過ぎたところである。
「そんじゃ、攫わせてもらうぜ」
ダブルは、クロックハンドと彼の荷物をひょいと担ぎ上げると、店の出口へ歩きはじめた。
「俺の取りぶんよーろしくぅーー」
クロックハンドの声は、あっという間に遠ざかっていった。

「クロックは元気だな~」
ヒメマルが感心したように言う。
「精神的な後遺症は微塵もなさそうですね」
石化の感想を、
「うわっ、いった~、さむ!なんや?眠いやん…っちゅう感じ」
と、ケロリとした顔で表現しただけのことはある。

「ふぅ、今回、アイテム全体の数は少なかったけど、当たりだよ。守りの盾と、転移のかぶとがあった」
ブルーベルが、鑑定を終えたアイテムをテーブルに置いた。
「私もティーも鎧に恵まれてますから、これはクロック君に渡しましょうか」
「そうだな」
話しながら、ロードの2人は装備の交換をはじめた。
鎧、盾、兜と受け取ったティーカップは、最後に差し出されたカシナートをヒメマルに押し返した。

「えっ、ティー、カシナート使わないの?」
ティーカップは、そっぽを向いている。
「カシナートがあるのに使わないのは、非効率的だぞ」
頬杖をついてずっと視線を落としていたトキオが、低い声で言った。
「効率?」
ティーカップは、ふん、と鼻を鳴らした。
「僕の知ったことか」
「お前ついさっき自分で、」
意見しようとするトキオに背中を向けて立ち上がったティーカップは、イチジョウの肩に手をかけた。
「話したいことがある、後で奥のテーブルに来てくれ」
「私ですか?」
「ああ」

ティーカップの後ろ姿を見送って、トキオと目を合わせると、
「なんでしょうね?」
イチジョウは、首をすくめて軽く笑った。

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