79.ひと息

振り向くと、上に残してしまっていた4人が綺麗に着地していた。

「大丈夫ですか!?」
ブルーベルが、ティーカップに駆け寄る。
イチジョウがトキオに目を向けた。
「あ、俺は-そこかしこ打っちまったけど、とりあえず大したことねえよ」
「これ何や?」
クロックハンドが埋め込まれたプレートに気がついた。

「何やねん、これ脅してるつもりなんか?子供みたいなことやりよんな」
落ちた2人に、念のため、とマディをかけておいてから、イチジョウもプレートを覗き込んだ。
「いや~本当だ。これはいただけませんねえ」
2人が笑っていると、
「あ、…あ…」
後ろから、蚊のなくような声がした。

ふと見ると、
「…あ、あがろうよ。あがろう…」
その主は-ヒメマルで、
「ヒメマルくん!!」
イチジョウは慌ててその体を支えた。顔面蒼白で、今にも倒れそうだ。
「そうだな、のんびりしてる場合じゃねえや。地上に戻る仕掛けってやつ、探そうぜ」
「なあなあ、この魔方陣と違う?ダブルの言うてた感じのマークついとるで」
1ブロック向うで、クロックハンドが地面を指差している。
「どれどれ」
トキオが走り寄る。
イチジョウも、ヒメマルを肩に担いでそちらへ歩いて行く。

「…どうした?」
ティーカップは自分をじっと見上げているベルに、怪訝な顔を向けた。
「…いえ…、」
「心配でもしてるのか?マディもかけてもらったし、大丈夫だぞ」
「…、はい…」
踵をかえしたティーカップの背を追いながら、ブルーベルは、幽かに眉を寄せた。
*
魔方陣を使って無事地上に出たものの、ヒメマルがすっかり弱っているので、メンバーはギルガメッシュでひと息入れることにした。

ヒメマルは最初にブランデーを一口だけ飲んでから、ずっとうつ伏せている。
「ムラマサの影響、どうだ?」
手持ちぶさたなトキオが、そうイチジョウに振った。
「今はそんなに感じません。まだそんなに数をこなしていないからでしょうかね」
「やっぱ戦闘の数に比例すんのかな」
「そうだと思います」
「なあ、ベルちゃん、さっきの-」
クロックハンドがブルーベルの方を向いた時、
「今日はもうお開きにしないか」
ギルガメッシュに入っても装備を着けっぱなしでいたティーカップが、急に言った。
「…」
トキオはヒメマルの様子を見た。
…今日もう一度潜りなおす、というわけにはいきそうにない。
「…かな。そんじゃ、今日はお開きでいいか?」
皆が頷くと、ティーカップはさっさと席を立って、店を出て行ってしまった。

「装備外さねえから、まだ潜る気なんだと思ってたぜ」
トキオが少し意外そうに言った。
「私もそう思ってました」
「なぁ」
トキオが首を傾げていると、
「リーダー」
「ん?」
「話があるんだけど、ちょっといいかな」
ベルは出口を指差した。

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