78.落下

-やっ…べえ。

9階でワイバーンの一団と戦っている最中だった。
トキオが手前の一匹に一撃与えて、

-あとは魔法に任せて終りだな。

と、バックステップして間合いを取った時、


着地するはずの地面がなかった。 ここが
シュートの

ある部屋

だという

こと

を、












た。

片腕が一瞬何かにひっかかった気がして、


「坊ちゃま!!!!」


叫び声が聞こえた。

*







.

「…いってえ…」
トキオが、落ちた時に打ったらしい肩を抑えると、
「重い!!!」
腹の下から声がした。

ティーカップが下敷きになっていた。

「なんだ、お前も落ちたのかよ」
トキオが体を起こすと、
「君と一緒にするな」
ティーカップは体をさすりながら起き上がった。
「ったって落ちてんじゃねぇかよ、どう違うんだよ」
「こんな所に突っ立っていると、上から何か落ちてきたら当たるんじゃないか」
ティーカップは、トキオを無視して天井を見上げた。
「…あ、そりゃそうだな」
*
残されてしまった4人は、シュートの淵から暗い階下を覗き込んでいた。
よく見えないが、微かに2人の声が上ってくる。
「良かったー、大丈夫みたいやね。ベルちゃん、ぼっちゃまって?」
クロックハンドが、叫んだブルーベルに訊いた。
「ああ…、あぁ、そんなこと後で説明するよ、それより早く降りないと、10階に2人じゃ…地上に戻る手はあるんだって、ダブルが言ってたよな」
ブルーベルは苛立つ声で言いながら、イチジョウの方を向いた。
「言ってましたね。でも、今降りると下の2人にぶつかるかも知れませんから、少し待ってからにしましょう」
「声かけてから飛び降りた方が…あかんか、聞きつけてモンスターが来るかも知れんな」
クロックハンドが、提案しかけて取り消す。大き目の声を出さないと、下の階に届きそうにない。
「…そうだな」
イチジョウとクロックハンドの意見に、ブルーベルは頷いた。
クロックは立ち上がって周囲を警戒している。

イチジョウは、一言も発さないヒメマルの顔を窺った。
明らかに躊躇している。
顔色も良くない。
10階に下りるのをやめよう、というのは気軽に出した案のように見えたが、深い層に潜りたくない-全滅したくない、という思いは相当強いに違いない。
「すぐに帰れます。ムラマサもあります。大丈夫ですよ」
肩を抱いて囁くと、ヒメマルは力なく笑って、頷いた。
*
頭上に空いているシュートの穴から離れると、地面に光るプレートが埋め込まれているのが見えた。

「…なんだ、これ」

トキオはプレートを眺めた。ティーカップも横に立つ。
よく見るとプレートが光っているのではなく、埋め込まれている文字が光っているようだ。


You are trespassing on the domain of * * WERDNA * *.
There is no possibility that you can get past my guardians!
So sure am I of my defenses that I give you this clue:
"Contra-Dextra Avenue"
PS - Trebor Sux

(わかっておろうが、お前らは主なるメイジ、ワードナの領地を侵している。
お前らには俺様の守りは破れないだろう。
ましてや、俺様と闘おうなどとは思わないことだ!
そこで、アワレなお前らに、こんな手がかりを教えてやろう。
"コントラ デクストラ アベニュー"
PS-トレボー サックス)


じっと読んでいたティーカップは、
「…ワードナとかいう人物は、あまり頭が良くないんじゃないか」
と呟いた。
「…俺も、そう思う」
トキオが素直に同意する。

後ろで、ドドっと音がした。

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