42.5.許す方

ササハラはドアの前に立ったままのイチジョウの正面に来ると、鼻の当たるような距離まで顔を近づけた。
剃刀のような眼光で縛られて動けないイチジョウの帯を、巧みに解いていく。

イチジョウを下着だけに剥いてしまってから、やっとササハラが口を開いた。
「いい子がいたので、一泊した…と?」
「…は、はい」
イチジョウは気圧されながらも、
-「はいサヨナラ」というわけではなさそうだ-、
と、頭の隅で安心した。

「物足りないならどうしてそう言わないんです」
「いえ、そういうわけでは…」
抱かれる方に関しては、むしろ足りすぎるくらいだ。

「抱く相手を…ですね…、でも、それも、我慢出来ないからというわけでなく」
「軽い気持ちで?」
ササハラは残ったイチジョウの下着をゆっくり引き降ろした。
半勃ちになったものに引っ掛かった所で、手を止める。
「そんな…ところです」
赤面しながら、イチジョウはどうにか目を逸らす。
どうも自分はササハラのシチュエーションづくりに弱いらしい。

「…まあ」
ササハラの指が下着に潜り込んで、イチジョウのものを柔らかく引き出す。
「これだけのものですから、使いたくなるのもわかりますが」
イチジョウのそれは大きさもそこそこだが、かなり太い。
その円周にササハラの長い指が絡みつく。
「サ…サハラ君は、そういう…ことを、許せる方、ですか?」
下肢の力が抜ける。
イチジョウはドアに体重を預けた。

「許す方だと思っていたから、外で寝て来たんでしょう」
ササハラの指が小刻みに上下する。
「…っ、ふ…そ、…うですが…ん…」
イチジョウの顎が上がる。
数回寝ただけで、どういう責め方に弱いのかを殆ど掴まれてしまったらしい。

「構いませんよ、こちらだけを使う分には」
空いてる方の指が、小さな口から漏れだしている透明の液体を掬った。
「けれど、こちらを使うことと-」
今濡らした指で後ろの入り口をなぞる。
「私が居る晩に、外で寝るのはいただけない」
「それは…」
言いかけるイチジョウの唇に軽くくちづけて、ササハラはフッと微笑んだ。
「しかし今回は仕方がない。知らなかったわけですから」
イチジョウの表情は、安堵で弛緩した。

が、
「さ、ササハラ君?」
ササハラは踵をかえすと、床に整然と置いてある武具の中央まで戻って腰を下ろしてしまった。

「あの…」
「おあずけです」
「えええ!?」

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