36.5.イニシャル

ブルーベルは、城内の軍人寮ではなく、冒険者達の利用するロイヤルスイートに連れてこられた。
-いい給料貰ってんだろうな。
遊ぶ為にロイヤルスイートを借りることなど、大したことではないに違いない。

先導していた男と右に立っていた男が装備を外しはじめ、腰に手を回していた男は、後ろからブルーベルのローブに手をかける。
ブルーベルは無言で、男に軽く視線を当ててみた。
一番大柄なその男はいやらしい笑顔を作って、脱がす手を早める。
肩から落ちたローブが腰のベルトで止まり、華奢な上半身が剥き出しになると、男はベルの首筋を舐りはじめた。
「…いや…」
形だけ、抵抗するフリをしてやる。

本気で抵抗しても、こんな男達相手にかなうわけがない。
殴りつけられて、強引に犯されるだけだ。それよりは-
-楽しまなくちゃな。
ヒトにあまり興味のないベルにとって、1対1のセックスほどつまらないものはない。
昔からこういう手合いに好かれ易かったことも手伝って、輪姦は、ヒト相手に楽しめる数少ないシチュエーションのひとつだった。

「んぁ!」
首筋をしゃぶりながら、大男がベルの両乳首を弄びはじめた。
指は太いくせにその動きは巧みで、腰から力が抜けていく。
「フライングだぞ、GD。脱いでからにしな」
大男を指差して、痩身の男が言った。既に上半身裸だ。
「鎧つけたままでお前のでっけえナニは引っ張り出せやしないだろ?」
先導していた優男は下着一枚になっている。ブルーベル自身は全く気にかけていなかったのだが、この男は一般的に言うところの美形顔で、一見穏やかな雰囲気だ。多分、いつも誘いをかける役なのだろう。
その優男に肩をトンと突かれて、"GD"と呼ばれた大男は、渋々ブルーベルを放した。

優男はブルーベルを横抱きにすると、ロイヤルスイートならではの大きなベッドに運んだ。
自分もベッドの上に乗ると、酒の用意をしている痩身の男に、
「CC?」
と声をかける。"CC"は、酒の味見をしながら「お先にどうぞ」とばかりに手を軽く振って、椅子に座った。
-ふぅん。
男達が略称で呼び合うのを聞きながら、ブルーベルは親衛隊という肩書きの持つ力を大体理解した。
名前を略称やイニシャルで呼び合うのは、地位のある連中がこういうことをする時に、よく使う手だ。本名がわからないから犯人とは断定できない、などという馬鹿げた言い逃れで十分揉み消してしまえるということなのだろう。

「じゃ、お先に」
優男は慣れた手つきで残っていたブルーベルの服をあっという間に脱がすと、体を重ねてきた。
うン、と喉で声を出して、肩を押し返す。
本気ではないし、相手の力の方が遥かに強いからすぐに抱きすくめられた。
腰が押し付けられ、固い感触が伝わってくる。
たまに自分のものに触れるのがもどかしい。

ブルーベルは、乗っている男の腰に足を絡めた。

Back Next (R18)
entrance