32.5.口下手(2)

「なんや。どう違うんや、言うてみい」
自分の膝に腕を置いて、クロックハンドは見学の態勢になった。
「…」
ミカヅキは、口元を押さえたままでしばらく黙っていたが、
「…フィ リップ。…わ、」
「なんやねん。ハッキリ言えや」
語調が苛立つ。
「…わ…別れた、いのか?…俺、好きじゃない?…のか?」
ミカヅキの切れ長の瞳の端には、涙が溢れはじめている。
「ああん?俺が別れたいんかって?お前のこと好きやないんやないかって?」
「…」
目を閉じて頷くと、涙が零れた。

クロックは、思い切り呆れた顔をすると、
「はぁ?何言うてんのお前?大体、いつつきあうて言うた?俺らつきあってたんか?知らなんだわ。俺がいつお前のこと好きて言うた?言うたことあるか?」
ミカヅキは掌を顔に当てると、黙って首を振った。
「あほらし」
クロックは後ろに手をついて、重心を移動した。
ミカヅキの太股に跨ったままの脚が、大きく開く。
「いつまで泣いてんねん、みっともない」
ミカヅキは頷くが、なかなか顔から手を離さない。

「エディ」
本名を呼ぶと、やっと顔をあげた。
「早ぅ」
クロックは、自分の股間をゆっくりと擦って見せた。

ミカヅキはほんの一瞬だけ躊躇したものの-
次の瞬間には、そこに顔を埋めていた。

-おあずけ食らってた犬みたいや。

思いながら、背中を撫でてやる。
実際、絶食の後に好物を与えられたように、ミカヅキの舌は、茎と言わず、陰嚢と言わず-後ろの襞までも、隈なく舐めまわす。

「エディ」
自然と声が甘くなる。
「ええ子や」
両手で掴むように頭を撫でると、潤んだ目で見上げてきた。
涙と唾液と他の液体で、ミカヅキの顔はグチャグチャだ。

「お前みたいなけったいな奴、そうそうおらへんぞ」
太股で頭を挟んでやる。
「希少価値や…ずっと飼うてたる」
そう言って微笑んでやると、ミカヅキの顔がぱぁっと明るくなった。

「続き。」
促すと、嬉々として食餌を再開する。

クロックは仰向けに躯を倒すと、声を上げはじめた。

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