28.断り方

「僕、あなたみたいな考え方したことがなくて…なんだか、視界が広がったっていうか…」
「Eは大体俺みたいな考え方するよ」
ヒメマルは笑顔に困惑を乗せて返す。
「僕の気持ちを救ってくれたのはあなたです。あなたじゃなくちゃ駄目なんです!」
-…あらら…。
あのひとことだけで、そこまで気持ちを発展させてくれるとは思わなかった。ヒメマルは頬を掻いた。
「んっと…言いづらいんだけどさ。俺、Gには興味ないんだよね」
「Eになります!なれると思うんです!」

この一途で真面目な姿勢が完全にGのそれなのだが。
-うーん、参ったね。
Gにこんな風に好かれたのは初めてで、どう対処していいのかわからない。

「わからない奴だな」
後ろから声がしてすぐ、ブルーベルがヒメマルの横に現われた。
「遠回しに断られてるうちに察したらどうなんだ」
アインは一瞬、驚いたような狼狽したような表情になったが、
「僕、この人と話してるんです。横から口出さないで下さい」
と、ブルーベルを睨み返した。

「君なんかがどう努力したってヒメマルの気に入るものか」
「黙っててくださいよ!あなたは関係ないでしょ!?」
「大有りだ」
ブルーベルはそう言ってアインに視線をぶつけると、強い語気で続けた。
「彼は俺のものだ」
アインは今度こそ呆然とした。

「そう…なんですか?この人と、つきあってるんですか…?」
ヒメマルは、咄嗟にブルーベルの腰に手を回した。
「悪いけど、そういうことなんだよね」
「そんな、だったらどうしてどうして先に…」
「答えを聞かずに勝手に話し続けたのは君だろ」
「…」
「行こう、ヒメマル」
ブルーベルは、力強くヒメマルの手をとって歩き出す。
「あ、うん」
二、三歩踏み出した所で、
「僕、諦めません!!」
アインが叫ぶように言った。
*
ギルガメッシュの近くまで来て、やっと肩の力が抜けた。
「助かったよ~」
「ああいうガキってどんな断り文句言っても食い下がって来るから、さっさと逃げちゃうに限るよ」
ヒメマルはばつの悪い顔で笑った。
-あ、指輪…元気そうだから、渡せるかな?
懐を探った時、ブルーベルが前方を指差した。
「あれって」
「何、…わ。」

派手好きなヒメマルの目から見ても豪奢な装いの、長身のロードらしき姿が、こちらへ向かってくる。

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