11.地下2階

イチジョウがディアルディアルコラツモフィス等を習得し、魔術師の二人がマハリトを覚えたのを機に、パーティは地下2階の探索をはじめることにした。

しばらくマーフィーをいじめている間にティーカップがエルフと思えないほどのHPの伸びを見せ、すっかり打たれ強くなったので、例のますらおの鎧は現在トキオが着けている。
*
初めて降りる2階は相変わらず石壁が続くばかりで、見回しても1階と何ら変わりが無かった。

「この迷宮って、地下10階まであるんだよな…」
トキオは漠然とした不安を覚えた。この調子で10階まで同じような景色が続くのだろうか。
「こう視界に変化がないと、感覚がおかしくなりそうですね」
イチジョウが言う。
「たちの悪いトラップがあったりするんやろかなあ」
クロックが腰に手をあて、ぐるりと周りを見る。
ティーカップは剣の柄で壁をつつきまわして、隠し扉の有無を確かめているようだ。

「1階と違って、毒や麻痺能力持ってる怪物なんかもわさわさいるらしいよ~」
「魔法を使う奴もいるらしい」
どこで情報を仕入れたのか、ヒメマルとブルーベルがそう言った。
魔法を使うモンスターがいるということは、今までは無傷だった後衛も攻撃を受けるということだ。
トキオは一度咳払いをしてから、緊張した面持ちでメンバーの前に立った。
「よし。じゃあ、くれぐれも慎重に、無理をせず-」
「ティーがおらんよ」
「…」

ティーカップは、通路の角を曲がってすぐの所で見つかった。

「お前、いい加減にしとけよ」
「少し離れてただけじゃないか」
揉める2人を眺めていたクロックハンドが、不意に何かに気付いたように、きょろきょろと辺りを見回しはじめた。
「…なあ、なんか声がするで」
トキオとティーカップは口論をやめて耳を澄ました。
「?…そうか?」
「僕には聞こえないぞ」
他のメンバーも黙って聴覚に意識を集中させている。
「この先みたいやけど」
「行ってみましょうか?トキオ君」
「モンスターかも知れないね~」
「そのつもりで行こう」

パーティが、いつでも戦闘に入れる体勢を崩さず、声がするという方へ向かうと-

「なんだこりゃ」

金属製の置き物があった。

カエルをかたどったそれは、金属製のくせに前足を動かしながら、「イェイ!イェィ!」と叫んでいる。

「なんやこれおもろーー!!!」
クロックハンドが大喜びで駆け寄る。
「聞こえてたのって、この声か?」
トキオが聞く。
「これこれ!!」
「耳いいなあ」
カエルの声はあまり大きいわけではない。ヒメマルが感心したように言う。
「持って帰ってもええかなあ?」
「…動かしたら何か起こったりしないか?」
トキオが罠の可能性を示唆するも、
「その時はその時だ」
ティーカップがヒョイとそれを持ち上げて、クロックハンドに渡した。
「ありがと~、これ、俺が持っててもええ?」
誰もそんなものは持ちたくない。カエルはあっさりとクロックハンドの手に渡った。

よくわからないアイテムを持ち歩くのも不安なので、この日の探索はここまでにして、パーティは一度帰還することにした。
「識別してもらいに行くか」
「俺も行ってええ?」
トキオとクロックハンドは連れ立って、ギルガメッシュにいるシキの所へ向かった。

識別は、異例のスピードだった。

「誰がどう見たってカエルの置き物だろ」

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