9.ますらおの鎧

ボルタックにひとつだけしか置いていない鎧があって、今回ティーカップはそれを買うと言っていた。確か<ますらおの鎧>だ。

「ティーカップ、お前の鎧の話なんだろ。ゴタゴタは自分で解決しろよ」
トキオはそう言いながら、面倒くさそうに手を振った。
「仲間として注意するとかそういう気持ちはないんですか!?」
戦士は憤慨している。ティーカップは…なんでもない顔をしている。
「僕と君との話に、なんで彼らが関係あるんだ」
「…これだからEは嫌なんだ!」
「怒りの方向が変なほうに行っちゃってるよ~、なんとかしてよティーカップ~」
ヒメマルが笑いながら声をかける。

「ちゃかさないでください!」
戦士の怒りは最高潮だ。
「僕と話をする気がないなら、帰って構わないか?」
他人事のような顔をして、ティーカップが訊く。
「話さないなんて言ってません!!あなたの仲間が邪魔してるんでしょう!?」
「いちいち取り合うからいけないんじゃないか」
「無視なんか出来ません!」

「平行線だよなあ~」
トキオはメンバー中唯一仲裁に向いていそうなイチジョウの方を見たが…笑いを浮かべている。
面白がっているらしい。
-物腰丁寧でも、やっぱEなんだよなあ。
「…らちがあかないな」
ぼそりと言うと、ブルーベルが2人の方へ歩み寄って行った。

「状況を説明してくれ」
ベルはGの戦士に向かって言った。
「僕がますらおの鎧を手に取って、眺めてたんです。そしたらそれをこの人がもぎ取って」
「ティー、そうなんですか?」
「そうだ」
「それで、そのまま買っちゃったんですよ!そんなやり方ってありますか?」
「店主は何か?」
「金を払ってもらえるならどっちでもいいと言ったぞ」
「じゃあ、本当にこの人と君の問題だ。君はどうしたい」
ベルは落ち着いた声で戦士に訊いた。
「僕は、…鎧を返せとは言いません、それはもういいです。でも、ひとこと謝ってほしいんです」
「なんで謝らなくちゃいけないんだ?買うまでは誰のものでもないだろう」
「そうだけど!!」
興奮する戦士に手を向けて押しとどめると、ブルーベルは、
「これがEの考え方だ。価値観が違うから謝りようがない。あきらめてくれ」
と言った。
戦士はしばらく俯いていたが、
「…そうですね。Eの人相手に腹を立てるのが間違ってました…」
呟くように言うと、立ち去った。

「無口だと思ってたが、喋ってみると達者だな」
ティーカップが、見ていたメンバー全員の気持ちを代弁するような言葉をかけると、
「嫌いなんです、G。」

ブルーベルは初めて笑った。

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