8.EとG

次の日から探索を再開して、しばらくはこれといった問題も起こらなかった。

クロックハンドが罠をはずしそこねて(正しくは、罠を読み違えて-彼は「毒針」だと思ったのだが)、スタナーをまともに食らって、麻痺の解除手段がなかった為にカント寺院の世話になったぐらいだ。

「ボルタックよりがめついんじゃないか、あの坊主達」
ティーカップが苦い顔で言う。
「ほんとだよなあ。早くその手の治療呪文覚えてくれよ、イチジョウ。頼む」
トキオが言うと、イチジョウは深く頷いた。
「頑張らなければいけませんね」

Gだったら、仲間に申し訳なくなるぐらいの金を取られたのだ。
しかしそこはそれ、クロックハンドは、
「かなわんわぁ、なんか体じゅう触られたでえ」
という具合で、気にかけてもいない。

同じ時間に、同じような状況で、別のパーティの盗賊がカントから出てきていた。
しきりに仲間に謝っている。全員Gのパーティらしく、盗賊も、EからGに転向した人間のようだ。
パーティのメンバーは口々に「気にするな」「君しか開けられる人はいないんだから」と、フォローしている。

謝る気持ちも、フォローする気持ちもわからないではない。
しかしトキオは、自分ならやっぱり疲れるだろうと思いながら、その光景を見ていた。
盗賊以外が宝箱を開けるのはほぼ不可能だ。罠をはずしそこねたからといって毎回申し訳ないと思っていては神経が持たない。
Gの連中はあんなに気を遣いあって疲れないものだろうか、と思ったが、疲れるようならGではないのだろう。
EとGの根本的な違いを、改めて感じる。
*
ボルタック商店で揉め事が起こったのは、その日の夕方だった。

ここ数日の探索で少々出来た貯金で、トキオ達のパーティは買い物に来ていた。
皆でゾロゾロ入ることもないだろうと、全員の注文を書いたメモを持ったティーカップが代表で店へ入っていったのだが、なかなか出て来ない。
そのうち、店内から言い争うような声が聞こえてきた。知らない男の声と、ティーカップの声だ。
「あーあ」
トキオが頭を掻く。
「ティーやからなあ~」
クロックハンドも、ティーカップの性質がわかりはじめているようだ。

ケンカなら外でやってくれ、というボルタックのオヤジの声がした後で、ティーカップと共に若い戦士が出てきた。16、17歳だろうか。よく見ると、昼間カントで会ったGパーティのメンバーの1人だった。
「あなた達、この人とパーティを組んでるんですか!?」
戦士が喧嘩腰でこちらに向かって大声を出す。
「そうだけどぉ」
ヒメマルが答える。
「あなた達はどういう物の考え方してるんですか!?よくこんな人と組めますね!!」
「そんなこと言われても、ねぇ」
ヒメマルが目配せでトキオに振る。
「何やらかしたんだよティーカップ」
トキオが諦めたような顔で聞く。
「僕は鎧を買っただけだ」
「僕が買おうとしてたのを横取りしたんじゃないですか!」

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