2.顔合わせ

トキオがテーブルにつき、お互いの名前とクラスと出身地方をざっくり伝え合う程度の簡単な自己紹介を終えると、ティーカップが、
「全員Eで、迷宮探索初心者だ」
と言った。

「ベテランがいなくても大丈夫かな」
トキオが言うと、
「ベテランの人と一緒って、勉強になるかもだけど、なんか緊張するじゃない?俺はこういうパーティの方が好きだな~」
南洋の鳥のような、ヒラヒラした布と羽だらけの服を着たヒメマルが言った。さっき手を振ってきたのはこの男だ。
「その服、火とかついたらヤバイんじゃねえの」
「オシャレの為に死ぬなら本望だよ~」
ヒメマルがふわりと腕を広げて笑う。彼は魔術師(メイジ)だ。ノリが緩くて軽いが、親しみやすい雰囲気を持っている。
もう一人の魔術師は、ブルーベル。あまり表情を変えない、淡白そうなハーフエルフである。
僧侶(プリースト)イチジョウは、言葉遣いが丁寧で、落ち着いた感じの男。
盗賊(シーフ)クロックハンドは、聞きなれない方言を使う。元気のいい、少年っぽさのある青年。
ひととおりの挨拶が終わったあと、トキオがメンバー達から受けた印象は、そんな感じだ。

一度軽く潜ってみるかという話になり、それぞれ、ボルタック商店で買っておいた装備を身につける。所持金に余裕のある者はいないようで、誰の装備も最低限のものばかりだ。

「それにしても君は着飾るということを知らなさすぎるな。その地味な服はなんだ?」
ティーカップが、トキオの服をしげしげと眺めて言う。
「俺はすぐ鎧着けられるようにシンプルな服選んでんだよ。 お前はそのヒラヒラした服の上に安物の鎧着ける気か?」
「着こなす者次第でどうにでも見せられるものだよ。来るべき聖なる鎧を身につける時に備えて、身だしなみにはロードの心構えで気を配っておかないとな」
「ロードって…いつの話だよ」
「遠くない未来だ」
「あぁそうかよ、早いとこ頼むぜ」
「君なんかに言われなくてもそのつもりだ」
「……」

やはり組む相手を間違えただろうかと思いつつ、複雑な表情でふと横を見て、トキオは驚いた。
「あんた…いいカラダしてんなあ」
トキオの隣で上着を脱いでいたイチジョウは、柔和そうな笑顔を返して言った。
「将来はサムライになるつもりなんです」
腕も肩も、かなり逞しい。トキオやティーカップより腕力は強そうだ。
「こんな男でもなければ、前衛に僧侶をあてがうものか」
ティーカップが言う。
「前衛?あ、戦士クラスは俺達2人だけか」
戦士2に僧侶1が前衛、魔術師2に盗賊1が後衛というパーティである。
-転職予定は、ティーカップがロード、イチジョウがサムライか。こうなりゃ、忍者目指しちまうかなぁ。
同クラスがひとつのパーティに何人いても構わないのだが、なんとなく別のものを選んでみたくなるトキオだった。

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