トレボー王から「地下迷宮に潜む大魔道師・ワードナを倒し、魔除けを持ち帰った者に多大なる褒美を与え、貴族にも等しい"親衛隊"に抜擢する」というお触れが出て以来、多くの冒険者達がそれを目指して地下迷宮に挑んでいた。



1.仲間集め

この城下町で生まれ育ったヒューマントキオは、お触れの内容を知るとすぐに訓練場へ赴き、研鑽の日々を経て、めでたく本日「戦士(ファイター)」の肩書きを持つことを許可された。
今、彼は、クラスを得た者が皆そうするように、パーティのメンバーを集める為にギルガメッシュの酒場に向かっている。

-出来れば男ばっかのパーティがいいんだけどなー。でも、メンバーを好きになっちまったらややこしくなるかもだし、どうすっかなあ。あと、初心者ばっかで組むか、ベテラン混じりのパーティに入れてもらうかってのも…
そんなことを思いながら酒場に入った途端、肩を叩かれた。

「やあ、トキオ君。仲間探しか?」

声をかけてきたのは、エルフティーカップだった。トキオは、何度か訓練場でこの男と同じパーティになったことがある。
同時期に訓練場にいた者の中では、戦士としての腕はいい方だと思う。が、口が悪くて態度も大きい。いわゆる尊大な性格のようで、人の言っていることを聞かずに好き勝手に行動していることも多々あった。組んだらトラブルが起こりそうだ。

「探してるけど、お前とはあんま組みたくねえ」
トキオは率直に返事をした。
「心外だな。同じじゃないか。仲良くやろう」
言葉とは裏腹に、ティーカップの視線はどこか冷ややかに見える。
エルフらしい切れ長の目つきがそう感じさせるだけなのかも知れないが、単純な性格のトキオは、こういう腹の内のよくわからない男は苦手だ。そもそもエルフという種族自体にそういう印象があって、あまり自分と合うような気がしない。

「お前、訓練場で好き放題やってたじゃねえかよ。Eだからっつって、パーティの和を乱す奴とは組めねえよ」
トキオが言うと、ティーカップは軽く片眉を上げて答えた。
「僕が好き放題やっていたように見えたのか?それは君と僕の行動原理が違うせいだ」
「だからその、行動原理?の合う奴同士で組んだ方が、揉め事とか起きなくていいんじゃねえの?」
「似た者同士で集まるという単純な選択も悪くはないだろうが、君は、自分自身とは異なる価値観を理解し、視野を広げようとは思わないのか?」
棘を含んではいるものの、理屈としてはもっともなことを言われて、トキオは少し考えこんだ。
確かに、自分と同じようなタイプばかり集めればやりやすいかも知れないが、様々な考え方を知ることはいい経験になりそうだ。

「…それは、まあ…その方が色々勉強になるかもな」
トキオの言葉を聞いて、ティーカップは満足したように小さく頷くと、
「もう4人までは揃えてある。最後に君を誘おうと思って待ってたんだ」
親指でくいっと少し離れた丸テーブルを指した。
自分とあまり年齢の変わらなさそうな連中が座っている。そのうちの一人がこちらに向かって笑顔で手を振ってきたので、トキオは愛想よく会釈を返した。待っていたと言われると悪い気もせず、トキオの気持ちはこのパーティにぐっと傾いた。

「全員男で、君と同じ趣味だ。美形ぞろいだぞ」
「え?お、同じ趣味って、何が?」
「女性にあまり興味がないということだよ」
すました顔でそんなことを言われて、トキオは動揺した。
「なんでお前がそんなこと知ってるんだよ!?」
ティーカップとは、訓練場でほとんど会話しなかったはずだ。当然、自分の性癖について話した覚えも全くない。
「君がそういう目で男を見るからじゃないか」
トキオは思わず自分の目を両手で押さえた。顔に出やすい性格なのは自覚しているが、そんな目つきをしていただろうか。
「入るのか入らないのか、どっちなんだ」
「…お前と組もうとする奴なんて、変わり者ばっかじゃねえの?」

悪態をつきながらも、トキオは4人の待つテーブルに向かった。

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